泉 千賀子 院長(向丘歯科クリニック)のインタビュー

向丘歯科クリニック 泉 千賀子 院長

向丘歯科クリニック 泉 千賀子 院長 CHIKAKO IZUMI

大学卒業後、研修を経て、昭和医大小児歯科へ。2年にわたって経験を重ね、父の医院を継承して開業。

歯科医師を志されたきっかけと経緯、こちらで開業された理由について教えてください。

外科医である父の背中を見て育ちました。尊敬していた父に追いつきたくて「人を治す」仕事に就こうと漠然と考えていましたが、手先が器用で探究心旺盛なわたしの特性を考えたとき、歯学に向いているのではと思いました。現在でもこの分野は勉強していて興味が尽きません。この歯科医院は、父が開業した病院をそのまま使っています。父は勤務医を経て開業したものの、わずか7~8年ですい臓がんで亡くなりました。当時は大学で修行中の身でしたが、この病院をずっと空き家のままにしておくわけにはいきません。研修医を経た後、昭和医大小児歯科で勤務医としてがむしゃらに働き、多くのものを吸収しようと努めました。2年の勤務医生活の後に開業し、この病院で32年間歯科医師として働いています。

病院のホームページを拝見して勉強になりました。ふだん患者さんにどんな指導をされていますか?

多くの患者さんに、できるだけ長く自分の歯を使っていただきたいと考えています。また、体全体を守るために、正しく咀嚼していただくことにも気を配っています。患者さんは、「歯が痛い」「歯が浮く」といった自覚症状を訴えて病院にいらっしゃいます。わたしは「痛みがなくなったらおしまい」という治療ではなく、歯周病予防のための定期的なメンテナンスをしていただくようお願いしていますが、患者さんが大変優秀で(笑)年齢を問わず多くの方が1ヶ月に1回、2ヶ月に1回といった頻度で来られます。わたしが20代なら、自分の健康よりも「遊び」に夢中だったのですが…マジメに通われるお嬢さんも多くてびっくりしています。
当院では、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)というクリーニング施術を保険適用範囲内かつ廉価で行っています。患者さんの定着率が高いのは、この施術が目当ての方が多いからかもしれません。患者さんが日常行っている歯磨きでは取りきれない汚れや歯石をすみずみまで洗浄するもので、専用の機械を使います。施術後の「さっぱり感」と、歯が美しくなるエステ的効果があり、この施術をいまだに自費治療項目として扱っている病院もあります。

「正しい咀嚼」について教えてください。

その人の骨格に合った「かみ合わせ」で、バランスよく咀嚼することです。咀嚼に障害があると、顔だけではなく周辺の骨格が変わっていき、そのうち体全体の「ゆがみ」につながります。一本抜いただけでもかみ合わせは変わるので、歯は長く守っていくことが後々の健康につながります。長く通院している患者さんが、治療時に右手の痺れを訴えられたことがあります。わたしはこの患者さんが右下7番目の歯を以前抜歯されていたことを覚えていたので、右側のほかの歯の高さを微調整しました。すると、治療が終わるころには痺れが取れ、その患者さんは嬉々として帰宅されました。歯はいわば「宙吊り」のような状態で骨とつながっており、時間の経過とともに少しずつ位置が変わってきます。「一本くらい…」と思って抜くと、後で支障が出る場合があります。長く診ている患者さんの状態は把握していますから、ちょっとした不調の原因も想像がつくのです。
かみ合わせは「千人千様」ですから、入れ歯の設計には本当に神経を遣います。入れ歯がぴったり合い、外見・咀嚼力ともに元に戻られた方は、次に来院されるときのご様子がまったく変わってきます。お化粧したり新調した洋服を着てうれしそうに来られます。正しく噛めると食事の楽しみが戻りますし、気持ちも明るくなる…最終的には体全体の健康にもつながります。

診察で心がけていること、日々のリフレッシュ法について教えてください。

当たり前のことですが、患者さんのお話をよくお聞きし、正しい治療計画を立てることです。幸いなことに、当院には長く通われている患者さんが多いのですが、これがわたしの歯科医師としての「誇り」です。思春期に最初に来院され、そのまま他院に「浮気」せず通われる方も多いのです。歯科医院は近隣に増えていますが、通院される患者さんの数はあまり減った気がしません。長く来院する方は当然、わたしに多方面での治療をお求めになります。ですからわたし自身も日々の勉強が欠かせず、さまざまな学会で情報交換に努めています。体力があれば地方まで出かけ、できるだけ多くの学会でお話を聞きたい気持ちはあるのですが…休診日には東京で開催されるセミナーに出かけるようにしています。歯科の領域は広く深いです。臨床に携わって30年以上の月日が経ちますが、いまだに興味が尽きず、極めるのが困難な学問だと思っています。
わたしのリフレッシュ法は、日課である「本屋通い」と読書です。畳敷きの部屋で寝ているのですが、寝る前に読書することが多いため、床の周りは本だらけです(笑)。新聞に面白そうな本の広告があると、その広告を切り抜いてお財布に入れてお店に行きます。そうして買った本がどんどん溜まり、読みきれない本が山のようにあります。
特に東京医科歯科大学名誉教授藤田紘一郎氏の著書が大好きで、わかりやすい平易な文章ながら、医師らしい奥深い考察にいつも感嘆しています。藤田氏のユーモラスなお人柄にもぞっこんです(笑)。
ほかには体を動かすことが好きですので、スポーツは何でもトライしています。

最後に地域の皆様にメッセージをお願いします。

みなさまに申し上げたいことは、(1)正しい顎位で正しいかみ合わせ、(2)鼻呼吸できる体制を作る、(3)噛む面積を増やしましょう、の3点です。(1)と(3)については、これまで申し上げてきた通り、正しいかみ合わせが健康を作る、ということです。噛むバランスによって顎位(あごの位置)は変化し、これによって体がゆがんだり、形相は変わります。急を要するものではありませんが、後々健康に支障を及ぼします。(2)につきましては、鼻呼吸によって体に有害なものを取り込まないようにしましょう、ということです。口呼吸が多いと、やはり顎位も変わってきますので、注意しなければなりません。
※上記記事は2013.10に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

向丘歯科クリニック 泉 千賀子 院長

向丘歯科クリニック泉 千賀子 院長 CHIKAKO IZUMI

向丘歯科クリニック 泉 千賀子 院長 CHIKAKO IZUMI

  • 出身地: 宮城県
  • 趣味・特技: スポーツ全般
  • 好きな作家: 村上春樹
  • 好きな映画: シンドラーのリスト
  • 好きな言葉・座右の銘: 慎ましく利他の心で生きていれば世の中うまく回っていく
  • 好きな音楽・アーティスト: クラシック、特にショパン
  • 好きな場所・観光地: 自然の多いところ、田舎

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